Whirlwind



(原案・設定・構想)
Aileen・kujidon・shima・瑠衣
(拍手構想)  瑠衣



第3話 番外編 (1)

週明けのオンディーヌ学園での一コマ。






和やかに会話が弾んでいた職員室の空気が一瞬にして緊迫したものに変わった。
ある女性の朝の挨拶で。

「おはようございます」

朝から怒りのオーラを身に纏った鷹宮紫織が現れたのだ。
原因は、先週末にあった歓迎会の日の出来事に違いない。

歓迎会が行なわれた場所で偶然にも紫織が狙っている紅学園の速水真澄に会うことが出来たのだ。
勤務している学園が違う為、偶然に会うという機会がほとんどない彼女は、何かと理由を作っては会う機会を狙っている。

そんな彼女にとってラッキーな1日のはずが、新任教師の登場で邪魔されたのだ。
翌日が休日で良かったと同僚教師たちは思っていた。
速水真澄と交わされる展開次第で彼女の翌日の機嫌が変わる。
少しのミスを見つけられたなら、他の教師達の前で容赦のない暴言を延々と吐かれるのだ。
ハッキリ言って八つ当たりである。
関係のない教師達には迷惑な話だ。
しかし、それを誰も注意することが出来ない。

鷹宮紫織は、カトレヤ女学院理事長の一人娘。
カトレヤ女学院とは日本初に設立されたお嬢様学校で、彼女の家系が代々守り引き継いでいる。
オンディーヌと懇意な間柄から教師をしながら理事長になる為の勉強をするのが目的で預けられているのだ。
仮にそんな彼女に苦言を呈したならば、明日から職なしの日々が待っている。
だから、わざわざ火に油を注ぐような真似は誰もしない。


「この間の歓迎会は最低でしたわ。速水先生にお会いすることが出来ましたのに。
あの新任教師のせいで、せっかくのチャンスを逃してしまいましたわ」

思い出すと腹立たしいと言わんばかりに紫織は大きな声で話を始めた。
他の教師達は聞きたくもない話を朝から聞かされるのかと思うと憂鬱になっている。
そんな教師達とは対照的にすかさず返事をしたのは舞だった。

「残念でしたね。あの子、名前はなんていうのかしら? 桜小路先生もずっと見つめていたんです」

「まあ、桜小路先生が?」

「ええ。私が横にいるのに・・・」

舞は顔を顰め悔しそうに呟いた。

「舞先生もあの子に邪魔されたのね」

紫織は自分だけでなく舞にも影響を及ぼしていた新任教師によりいっそう怒りが込み上げてくる。
舞も彼女がいなければ桜小路と気分良く帰れる筈だったので邪魔をされたことに腹を立てていた。
だから訴えるように力強く答える。

「そうなんです! 鷹宮先生」

「速水先生のことだから、あんなお子様教師を相手にするとは思わないけど、念には念を入れたほうが良さそうね」

腕組みをした紫織は、これからあの教師はマークした方がいいと考えた。
なぜなら速水が女性に対して優しい行動をしたのを初めて見たから。
普段の彼は言い寄る女性を素っ気無く断り、まったく相手にすることはない。
幹事とはいえ酔っ払っている女性を送るのにお姫様抱っこをした彼が不思議で仕方がなかったのだ。

何か考えこんでいる紫織にすかさず後押しする舞。

「そうですよ。速水先生の横には鷹宮先生が並んだ方が絶対にお似合いですから。私も協力します」

「そうね。ありがとう、舞先生」

舞と話をして気分が軽くなった紫織は彼女に優しく微笑んだ。


麻生舞は新任教師でありながら、長いものには巻かれよのことわざ通りにすぐに鷹宮紫織についた一人である。
二人はタイプが似ていた為か始業式の日に意気投合し、紫織は早速、舞を可愛がっているのだ。


そんな彼女達から離れた所で別のオーラを放つ女性が一人。
同じく今年の新任教師で姫川亜弓だ。
オンディーヌ学園で最も注目されている彼女は、同僚の男性教師達が密かに狙っている存在。
しかし、当の本人は同僚教師達に全く興味がないので誘われても相手にしていない。

今日も男性教師からの熱い視線を受けながら一人黙々と仕事をこなしている。
そんな中、広くもない職員室で人の迷惑を顧みず大きな声を出して話をしている二人の会話が嫌でも耳に入ってきた。
その内容に亜弓は眉を顰める。

亜弓は赴任してから紫織という女性が理解できなかった。
女学院出身の彼女なら社会人として礼儀正しい行動を取るべきではないのかと。
いずれは理事長に就く為に現在勉強している身だと聞いている。
それなのに彼女の態度は完全にお嬢様の我侭を貫き通している。
この職員室の空気を乱しているのは明らかに紫織なのだ。

それに彼女達が話題にしていた人物は、亜弓の親友だった。
先日、その親友に歓迎会当日の話を聞いていたからこそ、わかったことなのだが。
(マヤもとんでもない相手に目を付けられたものね。
今度マヤに会ったら気をつけるように言わないと・・・)
亜弓は心の中で呟くと小さく溜息を吐いた。





<END>





2006年03月09日   written by 瑠衣






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